1月16日(土)東京グローブ座13時開演の
「王女メディア」を観に行きました。
上演時間休憩無しの2時間10分。
<キャスト>
<あらすじ>
コリントスのある屋敷から女の嘆く声が聞こえてくる。
かつて──黒海沿岸の国コルキスの王女メディアは、
ギリシアのイオルコスからやって来たイアーソンと恋に落ちた。
イアーソンが金羊毛を手に入れるため、力を貸したメディアは
父を棄て、故郷を棄て、共にイオルコスへと向かったのだった。
そしてイアーソンから王位を奪った領主を殺害し、
コリントスへと逃れてきたのである。
けれどもいま、イアーソンは保身のため、コリントスの国王
クレオンの娘を妻に迎えることを決めてしまった。クレオンはメ
ディアとその二人の息子に国を出て行くよう命令を下す。
不実をなじるメディアに、イアーソンは子どもたちの
将来のためを思って新しい縁組を承知したと言い募るのだった。
『さあ、まっすぐに怖ろしいことへつき進もう・・・
女と生まれた身ではないか。善いことにかけてはまったくの力なし、
けれども、悪いことにかけてなら、何をやらせてもこの上ない
上手と言われる、女と生まれたこの身ではないか』
自らの運命を嘆き、呪い、そしてメディアは、復讐を決意する。
『この私をかよわい女、いくじのない女だと、誰に思わせておくものか』
出演者が全員男性。メディアとイアーソンの子供たちは
人形でしたが、人形が生きているようでした。
名目上、子供の安定した生活の為、とはいえ、
若い妻を娶る為に支えてきた妻を追い払うとはひどい話。
メディアが怒るのはごもっともな話なのですが、
自分の子供たちを復讐に利用するというのは狂気の沙汰。
媚びる時と憾みつらみを吐き出すところでは声も表情も
ガラリと変わり、男性が演じるからこそのすごみがあった。
調べてみたら、メディアは、 詩人エウピリデスの代表的悲劇の
作品 「魔女メディア」という物語になっており、メディアは
叔母のキルケから魔法を習っていたとの事。
(キルケって名前は「王家の紋章」にも魔女として出てきたような…)
メディアがイアーソンに恋心を抱いたのはヴィーナスが、
息子のキューピッドに命じて、メディアに
愛の矢を打ちこんだから、という話になっていた。
現在、メディアと云う言葉は 「情報メディア」 の意味に用いられているが
愛と憎しみ、愛欲と残忍とは一つのものの裏と表であること、
善悪や理性で本能や感情を押さえることが出来ない
人間の心理の深奥をえぐったものである事から、
情報メディアにもまた、明と暗が、表と裏があることを、
暗示しているのかも知れない。 という表記がありました。
→ http://www.infonet.co.jp/ueyama/ip/episode/witch.html
平さんの母性と女としての性の心理的な葛藤が素晴らしく、
メディアの復讐ワールドに入り込んでしまった。
メディアとイアーソン、メディアと隣国の大守の
心理的駆け引きも面白かった。
メディアが血まみれになりながら殺した子供たちを抱き、
イアーソンに向かって高笑いする声が地獄の底から
湧き出るような声でゾーッとした。恐ろしい話だった。
平さんの82歳とは思えない鬼気迫る演技に圧倒された
2時間。板の上に立つとアドレナリンが放出する、
とコメントしていたそうです。尊敬します。
とても濃厚で濃密な舞台でした。

