4月6日(水)シアターコクーン18:30開演の
「ARCADIA」を観に行きました。この日は初日。
ネタバレありますのでお気を付け下さい。
<タイムテーブル>
公演プログラムは1000円。
作 : トム・ストッパード
翻訳 : 小田島恒志
演出 : 栗山民也
出演 : 堤真一、寺島しのぶ、井上芳雄、浦井健治、
安西慎太郎、趣里、神野三鈴、初音映莉子、山中 崇、
迫田孝也、塚本幸男、春海四方
<あらすじ>
著名な詩人バイロンも長逗留している、19世紀の英国の
豪奢な貴族の屋敷。 その屋敷の令嬢トマシナ・カヴァリー(趣里)は、
住み込みの家庭教師セプティマス・ホッジ(井上芳雄)に付いて
勉強中の早熟な少女。しかし、天才的な頭脳の持ち主の
彼女の旺盛な好奇心には、年上のセプティマスも歯が立たない。
あるとき、トマシナは、屋敷の庭園の手直し用の設計図に、
何の気なしにある書き込みをしてしまう。
その何気ない行動が、約200年後の世界に大きな波紋を
広げていくとは・・・。そして、約200年の時を経た現代。
同じカヴァリー家の屋敷の同じ居間に、過去の屋敷や庭園、
とりわけバイロンにまつわる謎を熱心に調べるベスト・セラー作家
ハンナ(寺島しのぶ)の姿があった。そこに、バイロン研究家の
バーナード(堤真一)が加わり、ライバル同士の研究競争が過熱!
その争いは、カヴァリー家の末裔ヴァレンタイン(浦井健治)、
クロエ(初音映莉子)兄妹を巻き込み、やがて・・・。
<ひとつの場所=同じ屋敷の同じ場所>を媒介として、繋がっていく
二つの時代と人々。それぞれの時代に生きる人々のドラマは、
クライマックスへと加速度を増しながら展開していく。
19世紀のトマシナと家庭教師セプティマスの「歴史の中に
消えていった過去」は、現代に復元されるのか?
現代の研究者バーナードとハンナを取り巻く人々の思惑、
そして、2人が追究する真理への情熱は?
この戯曲は1980年に「カオス」理論に魅せられた
トム・ストッパードさんが、「カオス」の数学的構造を
ありのままに模倣した構成の作品、との事。
「カオス」とは「混沌」という意味で、題名の「アルカディア」は
ローマの詩人・ウェルギリウスが理想郷として描いた
古代ギリシャの肥沃な土地なのだそうです。
劇中、アルゴリズム、やらフェルマーの最終定義、やら
熱力学第二法則、等、理数アレルギーの私の頭の中が
?マークでいっぱいに埋め尽くされてついていくのに大変だった。
そして台詞の中だけの登場人物がたくさんおり、
誰が誰なのか分からなくなり、さらに混乱。
詩人・バイロンというと、なんだか「ライ王のテラス」にでも
出てきそうな名前だし、井上芳雄さん演じる家庭教師・
セプティマスの名前を聞くと、「トランスフォーマー」のオプティマスを
思い出す始末。人物相関図を熟読してから見れば良かった。
舞台は八百屋舞台で傾斜があり、お屋敷の一室が19世紀と現代、
両方のシーンで使われます。過去と現代、それぞれキャストが
違うのですが、安西さんだけが19世紀のオーガスタス役と
現代のガス役の二役を演じていました。
ストッパードさんが貴族の生活を皮肉って書いた、と言う通り、
密会と浮気と、それを覗き見る執事や庭師や噂話、という
「メリーウィドウ」のような面白さもあり、凡人には理解しがたい
数学、物理の高尚な話と、俗っぽいシーンが混在した不思議な話だった。
レディ・クルームの台詞「あら、帽子をとって挨拶する為に、
帽子を取りに行ってるのね」という台詞には笑いが止まらなかった
井上芳雄さんの皮肉家な家庭教師役が面白かった。
勉強を教えながらも頭の中は愛欲でいっぱいのカテキョー。
トマシナから聞かれた「肉欲的な抱擁」の説明に大爆笑。
浦井君は「アルジャーノンに花束を」のチャーリーっぽいフワフワした
ところがあるのに、宇宙的な事を語る不思議キャラクターだった。
堤さん演じるバーナード。体育会系の熱さは、松岡修造さんのよう。
寺島しのぶさんのハンナ、研究一筋で奥手なところがチャーミングだった。
噂好きの執事・ジェラピーを演じた春海さん、礼儀正しくて
上品なのに「、家政婦は見た」の市原悦子さん状態で最高( ´艸`)
神野さんの伯爵夫人、自分と同じ政略的な結婚を、娘にも
強要するが、どこか寂しそうで、愛を求めているところが
「ロミオとジュリエット」のジュリエットと母親の関係に似ている。
娘役のトマシナを演じた、趣里さん、存在感がすごかった。
難しい法則を発見したりと、天才なのに、思春期の女の子同様、
男性への興味も止められない好奇心旺盛でキュートな女の子だった。
トマシナが何気なく書いたものが、後に研究のテーマになったり、
学術的な新しい発見につながったりする面白さ。
別々に進行していた19世紀と現代の登場人物が、
同じ場所に登場し、時空を超えた光景が不思議な感じだった。
難しい公式や、法則、理論の話の部分を無理に理解しようと
しなければ、「メリー・ウィドウ」に謎解きミステリーと
ウィットに富んだ会話が面白くて、何度も見てみたくなる舞台だった。